アラサーのマッチングアプリ婚活/思考力を生贄に、ブルーアイズホワイトドラゴンを召喚!
初めて会う約束をした殿方は可愛い外見と裏腹に中身がAIだったので怖気付いてデートを取りやめてしまったが、知らない人と会う約束をするというハードルは、一度飛び越えてしまえばなんということはなかった。
「会いませんか?」ときたら、ぜひぜひ!と打ち返すだけ。
「会ってみたいんですけど…」もぜひぜひ!でいける。
「一緒にご飯行きませんか?」ぜひぜひ!
「勤務地近いので会社帰りに飲みませんか」ぜひぜひ!
「美味しいオムライス屋さん知ってますよ」ぜひぜひ!
「一緒に見たいインド映画があって」ぜひぜひ!
濁点を打つのがちょっと面倒なくらいで、慣れれば0.3秒で済む。
思考しない人間は強い。
メッセージとプロフィールを睨んで人柄を推理したり妄想を膨らませたりする頭脳労働を捨てた私は、スケジュール帳の白い場所を見つけては知らない人の名前で埋めていく。
気づくと、ひと月に会う予定の人が15人を超えていた。
2日に一回会う計算。
平日は残業する場合もあるので、休日にダブルヘッダーする日もちらほら。
ぜひぜひ!を打ち込むことに専念していた私は、気づかぬうちに自分でもコントロールできない力を手にしていたらしい。
ふふ…
ふふふ…。
はああうわああああああーーーー!!めんどくせえ!!!
めんどくさ!
めんどくせえ!!
は?
なんなの?
やだよこんなスケジュール!
ああああああああああ!
つづく
アラサーのマッチングアプリ婚活/ VSカワイイ系男子(人工知能)
マッチングアプリで知り合ったカワイイ系男子、ユウキくんとご飯に行く約束をしてから数日。
どんな服を着ていこう?どんな話をしよう?会ってがっかりされないかしら?とドキドキワクワクしていた。
はずだった。
いや最初は確かに、見知らぬ男性(子犬っぽいカワイイ系)と二人で食事に行くという不安と興奮で胸が高まりっぱなしだったのだが、だんだんと違和感が渦巻くようになっていた。
メッセージの内容がなんだか…なんだかなのだ。
例えば一昨日の朝には
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「コマコさん!おはようございます!♪( ´▽`)昨日はよく眠れましたか??」
はい!ぐっすりでしたー(^^) ユウキさんはどうでした?
「僕もぐっすりでした!(=´∀`)」
そうなんですね、それはなによりです!
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昨日の朝には
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「コマコさん!おはようございます!昨日はよく眠れましたか?o(`ω´ )o」
昨日はドラマを見ていて少し遅くなっちゃったので今日はちょっと眠いです…。ユウキさんは?
「僕はぐっすりでした!(*'▽'*)」
そうなんですね、よかったです!
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今日の朝には
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「コマコさん!おはようございます!\(//∇//)\昨日はよく眠れましたか?」
えーっと…よく寝たと思います。ユウキさんはどうですか?
「僕はぐっすりでした!( ^ω^ )」
…そうなんですね…!
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お分かりいただけただろうか…。
彼はこのように朝には毎日睡眠の調子を聞いてくるのだ。そして同じ形式で、昼にはお昼ごはんの内容を、夜には仕事の進捗具合を聞いてくる。
こちらの答えに対して、例えば「昨日はなんのドラマ見たんですか?」「結構夜更かしするタイプですか?」みたいに会話がそれ以上に発展することはなく、律儀に毎回同じ質問、同じ答え。
こちらから「お料理とかするんですか?」などとふっても「苦手なんですよね(//∇//)」と一問一答で返ってくるだけで話が続かず、朝になると睡眠の質を確認される。
ちなみに、日中忙しいと
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「コマコさん!おはようございます!昨日はよく眠れましたか?」(忙しくて返信できず)
「コマコさん!こんにちは!お昼はなにを食べましたか?」(忙しくて返信できず)
「コマコさん!お疲れ様です!今日のお仕事は忙しかったですか?」
わあ、お疲れ様です!
すみません、今日は忙しくてすぐに返信できなくって…。
よく眠れました!あと、お昼は肉うどんでした!
「僕もぐっすりでした!」
……なによりです!!
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となる。
もしや臆病なアラサーがデートの約束を取り付ける経験を積むために、マッチングアプリが開発したAIなのか。
だったら納得だ。開発者に菓子折の一つでもお渡ししたいくらいだ。
しかし、ユウキくんが実体を持つ人間だったとして、この不思議なコミュニケーションスタイルではデートで15分と話が続く気がしない。
「すみません、彼氏ができてしまいました…。お会いする前で申し訳ないのですが、今週末の予定はキャンセルにしていただけないでしょうか…。」というメッセージをおくり、ユウキくんのアカウントを消した。
次だ、次!
婚活、どこからはじめるか⑧/カワイイ系男子を撃てよ撃てよ撃てよ
アプリで知り合った可愛らしい25歳男の子にご飯に誘われた。
まあたしかに、文字のやりとりだけではやっぱりどんな人かよく分かんないし、だらだら連絡取るよりさくっと会った方が…。
でも…危なくないのかな…。
飲み物に薬入れられたりしたらどうしよう。
待ち合わせ場所に行ったら、知らないチャラ男が立ってて、そのまま路地に連れ込まれて売り飛ばされたりして。
こういうのをデートDVっていうの?あれ?ちがう?
いや、真面目に出会いを求めてる方だったらもっと申し訳ないことになるかも。
相手は現実の私よりちょっと素敵な写真を見てやってくるわけだ。
アプリには画像の加工まではいかないにせよ、太い二の腕が目立たない角度で、目を大きく見開き、二重顎が見えない写真を載せている。
待ち合わせ場所に立ってる実写版私をみて、恐れをなして、目を逸らさずにそっと後退りで逃げてっちゃうかも。
うーん、そんなことになったら立ち上がれないくらい傷つくぞ。
でもでも、このハードルを超えないと前には進めない。
今まで関わりのなかった全然知らない人と仲良くなって、付き合って、結婚するためには、まずは出会わなきゃいけない。
うぐ…自明だ。
そもそも会わないんだったら、知らない人と延々メッセージをやり取りする必要なんてないじゃないか。
うぐぐぐぐ…。
…
……
………たちあがーれー
たちあがーれー
たちあがーれー、ガンダムーー
君よーーーー、さけべーーーーー!
巨大なー敵をー撃てよ!撃てよ!撃てよーー!
アニメ機動戦士ガンダムより、『翔べ!ガンダム』の1番と2番の都合のいいフレーズをエンドレスで頭の中に鳴り響かせて、「いつもけっこう暇してます。ぜひご飯いきましょう!」と打ち込む。
うう、これでいいのかな…。
婚活って、精神力、つかう…。
つづく
婚活、どこからはじめるか⑦/カワイイ系男子、ユウキ
マッチングした男性たちは、だいたいみなさんこざっぱりと清潔で、好青年ぽくて、礼儀正しく、スポーツなどをやっていらして、ネットフリックスやAmazonプライムをよく見ているようだ。
好感は持つものの、たくさんの人とやりとりしていると見分けがつかなくなってくる。
その中でユウキくんは、顔と名前が一致する数少ない人だ。
プロフィールの写真は、25歳にして男性というよりも男子と形容したくなるようなあどけない雰囲気。
パーマのかかった茶髪とくったくのない笑顔が印象的だ。
私の頼りになる友人Mが「アリ!…アリ!…んーーーーまあアリ!…ナシ!」という選別の狭間で、「おっなんか可愛い人出てきたよ!えーいいじゃんいいじゃん、アリ!超アリ!」とノリノリでスワイプしていて記憶に残っていた。
マッチングした後のメッセージも期待を裏切らない可愛らしさで、平仮名や伸ばし棒が多め。
こんな感じの・:*+.\*1/.:+顔文字や、こんな感じの(*´∀`)♪顔文字をつかってやりとりを盛り上げてくれた。
首都圏出身の地方公務員。うんうん、素敵。
年下の男の子って今まで周りにあんまりいなかったけど、これは幸先いいんじゃないか?
よく考えるとガサツな私にはこのくらいフェミニンな人の方が合う気もするぞ。
「コマ子さん!お休みの日ってなにしてますかー?もし迷惑じゃなかったら、こんどごはんいきませんか??(//∇//)」
わーお!
まだやりとりをはじめて2日も経っていないのに、さささすが、戦場。
日常生活とはちがって鉄砲玉がビュンビュン飛び交っている…!
つづく
*1: °ω°
婚活、どこからはじめるか⑥/マッチングアプリは、沼
アプリ画面の上に次々にポップアップされる『マッチング完了!』と『〇〇さんからいいね!をされました』の表示を目で追いきれない。
いいね!をしてくれた人のプロフィールを見て、スワイプし、マッチング完了した人のプロフィールを開いて、再確認し、マッチングした人のメッセージを開いて
「こんにちは!いいねありがとうございます!ダイキです!よろしくお願いします!」
「マッチングできて嬉しいです。ケイって呼んでください。」
「タクミっていいます。僕も餃子大好きです!」
………いや、もう一体誰が誰なんだよ!!!
戸惑っているうちにもポップアップはどんどんやってくる。
い、忙しくない?これ…。あと今更だけど、会社の同僚とか大学の友達とマッチングしそうで怖すぎるんだけど。
「あ、Facebookの友達の友達までは表示されないようになってるからいけるいけるー」
マッチングアプリの伝道師Mはやはり頼りになる。
そういえば最近、ここ何年も連絡をとってないような知人からFacebookで友達申請が来ることが増えていたけど、あれはマッチングアプリで遭遇しないように予防線を張っていたのかもしれないな。
私もあとで、バーチャルな環境で出会いたくない人と重点的に友達になっておこう…。
頼れる女Mのお導きのおかげで、初日から10人以上の人と連絡を取り合うようになり、日を追うごとにその数は増えていく。
みなさんプロフィールの写真は爽やかで、メッセージは礼儀正しく、ソツのないご趣味をお持ちなんだなあ。
いろんな男性のプロフィールを見て分かったのは、『とにかく笑顔は好印象』『自撮りはなんかこわい』ということ。
どんなにプロフィールで『友達が多くて、おしゃべり好きです!』『趣味はサーフィン。休日はいつもアクティブに過ごしてます!』と言われても、家の洗面台の白熱灯に照らされた真顔は顔色が悪く見えるし、何度も撮り直したのかな…とかいらんことを想像して勝手にナルシストっぽい印象を持ってしまう。
以前男女合わせて100人近くの顔写真を次々に撮影したことがあるけど、女性は「はい笑ってー!チーズ!」といえばだいたい素敵な表情を作ってくれるのに対して、男性は自分がどんな表情をしているか頼りなげで、こちらが空気をほぐさないとうまく笑顔を作れない人が多かった。
写真を撮られる(撮らせる)ことに慣れていない男性は、他の人にとってもらった自然な笑顔の写真を1枚目に登録することで『不合格』にスワイプされることがグッと減るんじゃないかしら…。
余計なお世話ですね。
そんなことを考えてるうちに、だんだんと顔と名前が一致する人が出てきはじめた。
続く
婚活、どこからはじめるか⑤/とか言ってるからダメなんだよ。
いろんな角度から婚活について考えてきた私は、友達Mにここまでの進捗を報告した。
Mは子熊に似た27歳の女性で、でんでんでんぐりがえしでバイバイバイするのが似合う愛嬌と、南国っぽい陽気でおおらかな雰囲気がある。
私が結婚というテーマにいかに向き合い、婚活の下準備としていかなる課題に頭を悩ませてきたか。
一部始終をフンフンと聞いたMは、「んー…。準備とか言ってるからダメなんじゃなーい?」と答えた。
え、いやいや、婚活するならまずいろいろ考えないといけないって書いてあるんだけど。
「かんけーないって!そんなんの前に婚活アプリやりなって。面白すぎてやべえから」
かくして、私の婚活にあたる検討は5項目中3項目まででとりあえず完了として、婚活アプリという戦場にいきなり繰り出すことになった。
ラテン系の子熊はこんがり日に焼けた小さな手で私のスマホを器用に扱うと、『Omiai』というアプリをダウンロードした。
Mいわく、同じマッチングアプリの『Tinder』よりは参加人数が少ない代わりに真面目(年齢層高め)で、『ゼクシィ縁結び』よりは多くの人が登録していて軽いノリ(結婚のプレッシャーが重くない)らしい。
運転免許証と、大学以降の私の半生の記録がつまったFacebookアカウント。
個人情報の塊をぶち込み、自分の身長やら体型やらのプロフィール、相手に望む年収やら企業やらのプロフィールを素早く打ち込んでいく…Mが。
え、あの、伴侶見つけるために私これまでめちゃめちゃ考えてきたんだけど…。
「やーもう、だからそんなん考えだってしゃーないってえ」
反知性主義なMのスタンスにより、当たらずとも遠からず、現実の私よりちょっと素敵に仕上げられたプロフィールがネットの世界に爆誕した。
登録が完了したアプリを開いた瞬間、ドカンと知らない男性の顔写真が大きく表示される。
「え、アリ!!」
1秒もかからず『合格』ときめ、将来の伴侶候補をスワイプする子熊。
えっ!!!えっ、いや、そんな感じ?将来の伴侶探してるんですけど??
「マッチングしないとなんも始まんないんだから…アリ!…アリ!…ナシ!あっやべっ……アリ!…ナシ!」
次々表示される男性の半数以上は、Mの設定したなんらかのハードルを飛び越えて『合格』の方向にスワイプされていった。
「これで、相手もコマちゃんのこといいなと思ったら連絡取れるようになるから」
Mが言いおわらないうちに次々に『マッチング成立』のメッセージが表示される。
なんか大変なことになってきたぞ…。
続く
婚活、どこからはじめるか④/ダイエットしなきゃダメですか?
これまで特に答えは出てないけれども、1.婚活の期間、2.相手に求める条件について考えてきた。
答え出てないけども。
答え出てないのに先に進んでんだけれども。
◾️3.自分のメンテナンス
私が参考にしている記事を読むと、「いくら中身を見て欲しくても、見た目で足切りされないように、体型とファッションと髪型に気を付けましょう」ということらしい。
真理…!
ファッションと髪型はお金をかければとりあえずデートの時くらいはなんとかなるとして、問題は体型だよなあ。
なんたって食欲ではなく征服欲を満たすために、粉砂糖たっぷりの上品シュークリームちゃんを、夜分にひとり手づかみでもりもり食べちゃうし。
そういうところが可愛い♡とか言ってくれる殿方はいないもんかねえーとか、スニッカーズばりに甘いこと言ってるからダメなのは自覚しとりますがね。
これで30年近く生きてきちまったもんでねえ。
とりあえず、前回5キロダイエットした時に使っていたアプリ「あすけん」を5ヶ月ぶりに起動してみた。
バーチャルインストラクターの未来さんが目を丸くして再会を喜んでくれたのに気を良くして、とりあえずスマホ画面右下の1番指がタップしやすい場所にアプリを配置した。
一歩前進!えらいぞ!
フリック&スワイプのカロリーも消費してるはずだぞ!
うん!