アラサーのマッチングアプリ婚活/思考力を生贄に、ブルーアイズホワイトドラゴンを召喚!
初めて会う約束をした殿方は可愛い外見と裏腹に中身がAIだったので怖気付いてデートを取りやめてしまったが、知らない人と会う約束をするというハードルは、一度飛び越えてしまえばなんということはなかった。
「会いませんか?」ときたら、ぜひぜひ!と打ち返すだけ。
「会ってみたいんですけど…」もぜひぜひ!でいける。
「一緒にご飯行きませんか?」ぜひぜひ!
「勤務地近いので会社帰りに飲みませんか」ぜひぜひ!
「美味しいオムライス屋さん知ってますよ」ぜひぜひ!
「一緒に見たいインド映画があって」ぜひぜひ!
濁点を打つのがちょっと面倒なくらいで、慣れれば0.3秒で済む。
思考しない人間は強い。
メッセージとプロフィールを睨んで人柄を推理したり妄想を膨らませたりする頭脳労働を捨てた私は、スケジュール帳の白い場所を見つけては知らない人の名前で埋めていく。
気づくと、ひと月に会う予定の人が15人を超えていた。
2日に一回会う計算。
平日は残業する場合もあるので、休日にダブルヘッダーする日もちらほら。
ぜひぜひ!を打ち込むことに専念していた私は、気づかぬうちに自分でもコントロールできない力を手にしていたらしい。
ふふ…
ふふふ…。
はああうわああああああーーーー!!めんどくせえ!!!
めんどくさ!
めんどくせえ!!
は?
なんなの?
やだよこんなスケジュール!
ああああああああああ!
つづく