アラサーのマッチングアプリ婚活/ VSナイツ土屋、キミに決めた!④
自分の種族名を連呼することでお馴染みの黄色いネズミちゃん。
まさかモンスターボールではなく真っ黒の名刺入れから出てきて、これまた黒々とゴシック体で印字された氏名の隣に立つこともあるとは。
「いやー、実はね!働いてるの、IT系っていうかゲーム会社っていうか!」
不器用で生真面目で、甲高い声で早口で話す土屋パイセンは、「子どもたちに大人気の某キャラクターたちの存在を通して、現実世界と仮想世界の両方を豊かにする」というファンシーなキャッチコピーを持つ会社にお勤めらしい。
私は普段、初めて会う人に対して、子どもたちに大人気の某キャラクターの話はしない。
ゲームやアニメに親しんでいたのも、もう20年近く前の話だし、一般的な女児程度の興味しかなかった。
しかも、土屋さんの「桜島に行きました」という報告から「鹿児島ってポケ〇ンですよね」と受けるアクロバティックな会話で、まさか相手の仕事を褒めてしまうとは。
これ、すごくない?
きっと、ううん、絶対これは…。
私、霊感ある…!
自分の思わぬ才能開花に驚いていると、土屋パイセンもいたく興奮した様子で、いや、常に甲高い早口なので通常のテンションかもしれないけど、仕事について語ってくれた。
ゲームを世に送り出す仕事というのは、私の想像に反してモノづくりの喜びに溢れているらしかった。
と、土屋パイセンの手が目の前のグラスを弾き、隣の席の女性に倒してしまった。
やっぱ興奮してたのか、パイセン!
つづく